キーパーソンが語る当社戦略製品のコンセプト【MatChart】
【キーパーソンが語る当社戦略のコンセプト】
ソリューション部チーフエンジニアに聞く
新製品MatChartとモデルベース設計分野への展開
2013年12月、ジーダットはMATLAB®/Simulink®向け波形解析ツール:MatChartの販売を開始いたしました。
MATLAB/Simulinkは、数学的計算で業界をリードする世界的なソフトウェア開発会社、MathWorks(マスワークス)社の、モデルベース設計におけるデファクトスタンダード的なツールです。MatChartはそのMATLAB/Simulinkに向けた波形解析ツールで、ジーダットがこれまでEDA設計ツール開発において培った技術を投入しており、ジーダットのモデルベース設計分野への進出の第一歩と位置づけております。新製品のMatChart、そしてモデルベース分野への進出の可能性について、当社ソリューション部チーフエンジニア 井上賢に聞きました。
自動車・航空機設計等の分野で急速に普及しているモデルベースデザイン
モデルベールデザインとは、我々がプログラム開発で使っているC/C++というプログラミング言語よりもさらに高級な記述言語を使って、設計対 象をモデル化(抽象化・簡略化)し、各段階でシミュレーションを繰り返して精度を高めながら設計していく手法です。ここで「高級」というのは抽象度が高いという意味で、例えば数式をそのまま記述することができます。対象を抽象度が高いまま記述することができるため、設計・開発の効率が高まり、主に自動車・航空機等の分野で急速に普及しています。そのモデルベースデザイン設計ツールの市場で大きなシェアを占めているのが、米国マサチューセッツ州に本社を置くマスワークス社です。特に自動車業界では電気/電子に関する機能安全についての国際標準規格(ISO26262)にも対応しており、世界で広く使われています。
一方、ジーダットが保有している波形解析の技術はアナログ半導体回路の解析分野においてこれまで多くの実績があり、その技術はモデルベース設計・開発の分野でも大いに活用が可能です。そこで今回、モデルベース設計分野への進出の第一歩として、MATLAB/Simulink向けに開発した波形解析ツールがMatChartです。
MatChartは波形解析のスペシャルツール
まず、事業所に所属している設計者の技術レベルが非常に高く、かつ、守備範囲が広範なことです。そのためジーダットのデザインセンターでは、単なる設計受託に留MatChartは、MATLAB/Simulinkが出力する波形ファイルを読込み、波形を表示します。表示するだけでなく、簡単なカーソル操作で値を計測することができ、容易に波形解析・分析ができます。波形とは、例えばX軸に「時間」をおいた時に、Y軸に置いたもの、例えば電圧や電流、角度、パワー、距離など、様々なものが、時間の変化に対応してどう変化するのかを表示するものです。何を軸にするかで、数値化できるあらゆるものが波形になり得ます。つまり、波形にさえ出力できれば、波形同士で比較検証ができる、ということになります。例えば、モデルベースデザインレベルでシミュレーションし出力した波形と、アナログ半導体設計でよく使われているSPICEという回路シミュレータが出力した波形の比較も簡単です。2つの波形を読み込み表示させれば、簡単に解析を行うことができます。このように、抽象度が異なるレベル間の検証に対してソリューションを提供できるツールであることが、MatChartの大きなポイントです。
また、MatChartは波形データの表示スタイルを変えることができます。同じ波形を別表現させることによって、別の見方をした解析が可能になります。MATLAB/Simulinkの環境では、別の波形を出力するためにはモデルの変更やシミュレーションのやり直しなどが必要でしたので、MatChartを使用することで、これらにかかる時間や工数を大幅に削減することができ、多種多様な解析を素早く行いたいというニーズには最適なツールです。
MatChartの可能性
国内においては、時流として半導体製造メーカーが縮小化の傾向にあることは事実です。しかし、逆にそのために、半導体メーカーは自社内での設計を中止したり縮小したりして、我々のようなデザインセンターへ設計を委託する、というケースが増えつつあります。設計と製造の分業によって体制をスリム化し、それぞれが技術を極め今回開発したMatChartはMATLAB/Simulink向けのものでありますが、ジーダットの波形解析の技術は、他の設計言語(ツール)への対応も可能です。同じ「波形」で考えることにより、今後は異なる設計言語で書かれたデータ同士の比較などへの応用も可能です。また特定のお客様へ向けて、異なる言語間でモデルを移植したり、実績のある回路図のモデル化を行うなど、カスタムツールによるモデルベースデザイン設計ソリューションのご提供なども視野に入れております。
MATLAB/Simulinkをはじめとする「モデルベース設計」という手法は、自動車業界だけではなく、信号処理や、携帯通信、画像処理や動画処理、医療、金融工学、アルゴリズム開発など、多種多様なところで利用されています。ジーダットのMatChartは今後、自動車や航空機設計の分野だけではなく、あらゆる業界で活用できると確信しています。なぜなら、MatChartは波形を扱うツールですので、設計の対象が何であれ、また仮に抽象的なものであったとしても、実際の装置を計測機器により測定したものでも、出力を「波形」にすることでその等価検証を容易に行う事ができるからです。
モデルベースデザインデータを「波形にして比較検証したい」というニーズが業界や分野を問わず全世界共通である以上、MatChartの波形解析技術の対象もまた無限に広がっていると信じております。
MatChartはMathWorks社Connections Programにも承認され、今後はMathWorks社の公認ツールとして同社のホームページにおいても 紹介される予定です。MatChartのモデルベース設計分野への進出の第一歩です。
■ MATLAB®/Simulink®向け波形解析ツール:MatChart の製品情報は>>こちら
■ 2014年10月29日(水)に開催される「MATLAB EXPO 2014」にMatChartを出展いたします。詳細は>>こちら
*この文章は、当社第13期の株主通信に特集として掲載した記事を一部編集したものです